ハードウェアのスイッチャーに、ハードウェアの配信機器が、配信業務を請ける上での最低限の機材準備だと言う人もいます。確かに、vMixはWindowsパソコン上で動く配信ソフトウェアです。なので、相応のトラブルもあり得ます。PCの3.5mmヘッドフォン出力にささっているヘッドフォンが抜けて、vMixが落ちたことがありました。たぶんこれは、オーディオ出力設定がヘッドフォンではなくASIOになっているのに、その端子につながっているものが抜けたから。NDI入力は、切れるとvMixがフリーズすることが多いです。HDMI出力は、途中でTVを消したりして出力数が変わると、他へのHDMI出力にも影響して、下手するとオペモニが違うモニターになっちゃったりします。これはWindows&HDMIの仕様。

いずれもハードウェアスイッチャーならば起きないトラブルかもしれません。

でもパソコンって便利

再生できる動画形式の豊富さ。もちろんハードウェア系の再生装置もありますが、そもそも放送局などから納品されるものでない限り、きっちり規格に合った動画ファイルを持ってきてもらえることの方が少なくて、お客様のパソコンやスマホで再生できているものを持ち込まれるんですよね。その結果、ファイル形式にうるさいハードウェアでは再生できないけど、パソコンでなら再生できるという事も多いわけです。もちろん、再生機としてパソコンを用意すればいいという意見もありますけどね。

バーチャルセットでの合成。これもvMixの特徴の1つです。相応の能力は必要ですが、Photoshopで合成CGを作成することも出来ちゃいます。

そこまでのセットでなくても、すべてのインプットで10レイヤーを扱えるというのは大きなアドバンテージですね。スイッチャーでいう所の10M/Eということになります。いや、キーを使った合成が10M/Eということで、ただ静止画のPNGやGTタイトラーで作成した文字を重ねるだけなら、10M/Eというよりも、もっと多段に組むことも可能です。

そんな10M/Eに加えて、DSK・Overlayは4つ重ねられます。

ここら辺の合成に関しては、ハードウェアスイッチャーの及ばないところです。凝った画面構成が手間暇かければ可能です。この合成が多くなっていくと、必然的にインプット数も多くなるのですが、そうするとGPUの使用率が上がっていきます。弊社のPCではRTX 2080 Tiを積んでいますが、50%近い使用率までいくことがあります。CPUはCore i9-10900Kですが20%までいくことはありません。

そして、事前に手間暇かけられるのであれば、現場では複雑なオペレートを必要としないところまで組んで置けるというのも、vMixの特徴です。USBコントローラーを接続することで、多くのショートカットを自由に組むことができます。この自由さは、ハードウェアに慣れた人には”手間”と感じる人もいるでしょう。ハードウェアスイッチャーであれば、1のボタンを押せば1に接続した入力がPGMから出力されますが、vMixの場合は、いちいち組まなくてはいけませんから。でも一度体験してしまうともう戻れないくらい本番は楽に感じます。

されどパソコン

パソコンですから、メンテナンスが欠かせません。ハードウェアのメンテナンスとしては、持ち運びますからボードのゆるみやコネクタのゆるみなど。そしてインストールするソフトウェア。弊社ではメイン配信機にはvMix以外のソフトは極力入れないようにしています。高性能マシンですから、Adobe系や編集ソフト、音楽ソフトなど入れたくなるのですが、ソフトは要れれば入れるほど不安定になります。特に最近のソフトは、バックグラウンド処理でネットワークに繋いでアップデートしたり稼働したりしますから厄介です。なのでOfficeも入れていません。

OSやアプリ・ソフトが入るSSDと、vMixが収録するSSDは別にしますし、それを保存しておくHDDも別に用意しています。

OSやソフトのアップデートは判断が難しいところです。いま安定しているのなら触りたくない部分ではあります。OSのアップデートが原因によるトラブルは結構ありますから。業務の込み具合を鑑みて実施したほうがいいと思います。機材準備の際にOSアップデートを停止しておき、間違えても配信当日の朝にアップデートされる事態は避けましょう。

やっぱり怖い

ある程度、パソコンの知識は必要だと思います。どのくらいか。自作パソコンに抵抗がないくらい。実際に作ったことが無くてもいいのですが、自作パソコンが欲しいなという人であれば、なんとなくこの挙動は、ここが不安定なのかな?ということが感じられるはずです。

よくパソコンを使っていて「突然壊れたー」という人がいますが、そういう人に限って、デスクトップがアイコンで埋まっていて、OS系と自分で作成したデータ系が分かれていない。ドライブCの空き容量が全然なくて、ドライブDは1TB空いているなんてことが、ほんとよく見受けられます。たぶん動作が遅くなってきたとか、スワップが多くなってるとか、異音なんかの前兆も見逃しているでしょう。このような人には、vMixでの配信業務はお勧めしません!

また、最低限のバックアップ手段は持っておきたいです。vMixでやるような演出は出来なくなったとしても、当日はカメラ切替くらいはできるようにとか、後日編集でカバーできるようにとか。一番は冗長化できればいいのですけど。。。

結局

たぶん皆さんに「Windowsパソコンは不安定」という印象があると思います。ですが、ほぼ単独システムとして動かしていれば、それほど多くのトラブルは起こりません。すでに放送局の運行装置やデジタルコンソールの中身もWindowsベースだったりします。ただ放送局ではすべてを冗長化・もしくはバックアップ系統を切り替えられるようにしています。もちろん我々レベルでもそうすれば安心ですが、それはほぼ不可能ですよね。配信が始まってからの機材トラブルであれば、なおさらです。

であるなら、トラブルをどれだけ知っているか。事前に察知できるか。これこそが経験値であり、トラブル回避の方法となります。

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